和田浩二先生(琉球大学農学部)

~実は凄いぞ!柑橘の皮~
~実は凄いぞ!柑橘の皮~

 10年ほど前にテレビや新聞などで取り上げられて一躍全国区になったシークヮーサーは、沖縄柑橘の代表格。ジュースなどを飲んだことのある人も多いでしょう。発がん抑制や糖尿病予防などに効果がある機能性成分「ノビレチン」が多く含まれていることで、その独特な美味しさだけでなく健康食品としての可能性も注目されたのです。

 柑橘には、フラボノイドと総称される機能性成分が多く含まれています。代表的なのは、抗アレルギー作用や発がん抑制作用があるとされるヘスペリジン。ノビレチンも、発がん抑制や糖尿病予防に効果が認められている機能性成分のひとつです。このような生理活性物質は、実は果皮にこそ多く含まれていて、他にもさまざまな機能性成分が果皮に多く含まれていることがわかっています。ノビレチンが多く含まれているのも果皮、特に外果皮なのです。シークヮーサーは皮が薄いので、皮をむかずに果実を丸ごとしぼってジュースにします。健康によいとされるシークヮーサージュースの機能性は、皮が薄いことも関係しているといえます。

 琉球大学の和田さんが最近特に着目しているのは、沖縄柑橘に特有の強い香り。どうやら、ストレス緩和、リラックス効果といった「ヒーリングアロマ効果」が強い成分が多く含まれているようなのです。その多くは、やはり果皮に多く含まれています。沖縄柑橘の果皮に含まれる機能性成分の効能。これは、亜熱帯沖縄ならではの強い太陽光から実を守ってきた、野性味のある在来種の皮だからこその「力」なのかもしれません。

 

伊波英克先生(大分大学医学部)

 健康志向・自然派志向が先進国を中心に世界的にも高まっている中、沖縄県には世界的にも長寿・健康のイメージが定着しています。しかし近年、成人肥満率が全国1位になるなど、長寿・健康のイメージが失われつつあります。成人肥満が増えた最大の理由は米国食文化の蔓延と言われています。伝統的な沖縄料理に使われている食材、特に沖縄特産の農水産物に育まれている様々な栄養素・機能性をあらためて評価する大切な時期にさしかかっていると言えるのではないでしょうか。

 肥満は、容姿もさることながら健康においても問題となります。特に内臓脂肪(異所性脂肪)の増加は、メタボリック・シンドロームと呼ばれる状態を経て高血圧、高脂血症、糖尿病などの疾病リスクを高めます。内臓脂肪の蓄積が刺激となっておこる生理活性物質の分泌異常によって過剰に活性化される因子(NFκB:nuclear factor-kappaB)が糖尿病やがんを引き起こす一因になっています。

 このNF-κBの制御物質について研究をしていた伊波さんはNF- κBの過剰活性化を抑える物質がユズ果皮抽出物に含まれていること、さらに琉球大学の和田先生と共同で、その物質がテルペン類の一種であることを明らかにしました。そして、ユズ果皮抽出物をマウスへ経口投与すると、マウス体内のNF-κB活性と体重の増加を共に抑える効果があることを確認しました。

 沖縄県産柑橘類の中でシークヮーサーは機能性成分ノビレチンが豊富に含まれることで有名になりました。タンカン、カーブチー、オートーなど他の沖縄県産柑橘はまだ機能性成分の定量化や生物活性の検証が十分にはなされていませんが、シークヮーサーと同様の、または新たな機能性成分が含まれる可能性が十分に考えられます。成人肥満率が男女ともに1位の沖縄県。生活習慣病のリスクを減らすためにも、沖縄県産食材の優れた機能性について科学的に実証し、食生活の見直し、食育のきっかけにしたいと伊波さんは期待を込めています。

 

稲福さゆり先生(琉球大学農学部)

~在来野生種の強み~

 みなさんご存じの温州みかん。味もさることながら、生産体制、市場シェアも含めて、市場で温州みかんに敵う柑橘は日本にはないのかも知れません。ウンシュウミカンが東アジア温帯地域の出身ならば,沖縄の在来カンキツ類は,東南アジアの亜熱帯地域の出身であり,ウンシュウミカンより遥かに昔から栽培され,賞味されてきました.機能性においても,ウンシュウミカンとは異なる成分を持っていることがわかってきました.

 一方、沖縄県産柑橘を考えると、もちろん、好みがあるので一概に優劣をつけられるものではありませんが、シークヮーサーやオートー、カーブチー、タロガヨなどの在来種は、それぞれの個性的な味だけでは勝負しにくい半面、温州みかんに比べて圧倒的にフラボノイドを豊富に含んでいます。

 フラボノイドと総称される機能性成分は様々な薬理作用をもっています。10年程前にシークヮーサーが全国的に知られるようになった背景には、もちろん、酸味のある爽やかな味も人気を後押ししたと思いますが、フラボノイドの一種であるノビレチンが豊富に含まれていたことが要因としてあります。ノビレチンは、発がん抑制や、痴呆予防効果、メタボリックシンドロームに効果が認められている機能性成分のひとつで、他の柑橘類からも見出されていますが、シークヮーサーほど豊富には含まれていません。
 
 今まさに進められている沖縄柑橘の機能性成分研究の結果、在来種ならではの優れた薬効をもつ品種が、今なお沖縄には残されていることが明らかになるのではないでしょうか。

 

上原政幸先生(沖縄地域ネットワーク社)

~飲んで欲しいからこそ仕掛ける商品開発~
~飲んで欲しいからこそ仕掛ける商品開発~

 菓子等食品ビジネスプランナー養成講座に関わっている上原さんは、飲んで欲しいからこそマーケティングの視点で商品開発を行っています。ビジネスベース、産業ベースで取り組むというのは利益を追求しているかのように誤解されがちに思いますが、売れない商品を作るのは無意味ですし、継続して提供できない商品を作るのも無責任だと思います。

 今回開発中の商品は、沖縄柑橘の機能性飲料です。主役となるのはシークヮーサーで、既にいくつもの商品が世に出回っています。もちろん既に機能性を謳った商品も多数あります。量も値段も様々、沖縄産シークヮーサーの果汁の混入率も違います。酸味の強いシークヮーサーは飲料としてのテイストを考えると混入率をあまり高くすることができません。もちろんコストもかさみます。どんなに機能性に優れた飲み物でも、美味しくなければ続きませんし、値段が高くては継続して購入することはできません。

 では、どんな商品を作れば良いのでしょうか。上原さんはターゲットを絞り込んでアンケート調査を行いました。既存の商品との差別化も重要です。好みは何か、値段はどうか、購入形態はなにか、シークヮーサーの機能性を感じてもらうには毎日飲んでもらえる仕掛け作りが必要です。常に冷蔵庫に入れてあって常備飲料として位置づけるとなると価格は非常に大きなファクターです。ターゲットに合わせたパッケージデザインも意識します。もちろん、イメージだけでなく効果が実感できる、商品力が求められます。

 既に現在、商品化を前提に企業と協力しての試作段階にあります。マーケティングの視点で練られたコンセプトには、いくつもの仕掛けが含まれています。近い将来、商品を手に取る際には、値段の高い安い、美味しそう、効果がありそう、といった表面に見える商品イメージだけでなく、その陰に隠れた開発者の思惑を探ってみるのも面白いかも知れません。単に利益を生むためだけの売れる商品ではない、みなさんに愛される商品を目指した開発者の思いが伝わってくるに違いありません。

 

    科学の力で産業を興す!
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