クネンボ

 九年母は東南アジア原産といわれ,香橙,橙,など様々な別名があります,果皮が厚く,香りの独特な品種で,沖縄ではかつて羽地(名護市)に大産地があったことから'羽地トークニブ'の名で知られていました.九年母の名は,ヒンディー語のニブが語源にあると言われており,1880年にベトナムからアメリカにもたらされたKing Mandarin と同じ学名(C. nobilis Lour.)が付されていますが,実際には別品種です.ブンタン類と同様に亜熱帯から熱帯性の気候を好む性質を持っています.

 16世紀室町時代後半に,琉球を経由して日本へともたらされましたが,当時日本にはサイズの大きな生食用カンキツがなく,九年母は大変もてはやされました.有名な戦国武将の大好物であったとも言われています.その後,徳川時代になり,キシュウミカンが主流となるまで,九年母は関東地方にまで栽培が広まっていたと記録されています.しかし,本来の美味しさはやはり温暖な気候が必要であったため,害虫の問題で,本土への移出が制限される大正時代まで.沖縄の主要産品として重要なもののひとつでした.しかし,1919年よりミカンコミバエによる移出禁止措置がとられてからは,生産量が激減し,1982年にカンキツ類の移出が解禁されてからはもっぱらウンシュウやタンカンが栽培されるようになってしまいました.

 現在,生産量は少ないものの,各地で数本ずつ残っており,独特の香りや薬用効果を利用した「橘餅(きっぱん)」といった伝統菓子や,泡盛につけ込んで咳止め,風邪の治療に用いられています.特に,九年母の皮の厚さと香りを利用したマーマレードや砂糖菓子など,加工菓子の用途に向いています.

 機能性成分としては,未熟果実に多く含まれ,抗炎症,アレルギー反応を減らすとされるナリルチンが多く,また風邪の初期症状の緩和やダイエットに用いられるシネフリン,生活習慣病予防や抗炎症効果の知られているビタミンP(ヘスペリジン),またカロチンやβクリプトキサンチンも多く含まれることから,生活習慣病予防に適した果物のひとつでもあります。また.カーブチーやオートーといった在来カンキツ類の成立に九年母が関わったことが指摘されており,九年母は琉球在来カンキツ産みの親としてとても重要な品種であったことがわかっています.(文・稲福さゆり)

基本情報

糖度:11.0%

酸度:1.2%

果皮色:鮮緑黄-橙黄 ※

果肉色:明橙黄 ※

※日本園芸植物標準色票による

 

 

 

沖縄県産柑橘類の含有成分の分析-精油成分以外の分析-

クネンボにおけるポリメトキシフラボン類、フラバノン類、シネフリンの含量

クネンボはオートーと同様に、へプタメトキシフラボンを多く含むと同時に、フラバノン類の一種である、ナリルチンを多く含みます。沖縄では、古くより薬用として泡盛に漬け込んだものが用いられており、ナリルチンは炎症抑制作用を示すことが分かっています。